
生理前の影響もあってか、下腹部がどうも騒がしい。
いつも通り(身体の)関係者各位に連絡を入れば、その日のうちにソレを鎮火できたかもしれないが、正直、こちらが奉仕するのは億劫だった。
セフレとはいえ、そこには50:50のギブ&テイクが求められる。一方的な快楽の要求は、今や“竿ハラ”とも呼べる代物で、関係にヒビが入るリスクすらある。だが、相手の思いを汲み、要望に応えるだけの精神性など、PMS爆発時の私には備わっておらず、こちらの都合に合わせて、ただ気持ちよくしてもらいたいと、本音で言えばそれだった。
で、あれば、金で解決するしか道はない、と腹を括り、ネットで女性用風俗を検索。開いたサイトには、まるであの頃の学園の「一軍」が並んでいた。サッカー部、バスケ部、そういった青春のエースたちが、大人になった圧倒的ビジュアルと清潔感を武器に整列している。教室の隅っこで、カーテンレールに包まれていたような、3学期になっても“苗字+さん”で呼ばれていた私にとって、彼らを金で買うという行為は、大胆な飛躍だったが、それでも一際色気を放つ男に目を奪われ、プロフィールを覗く。
「クンニのスペシャリスト」「未知なる快楽をお届けします」と、やや誇張気味な文句だが、喉がなる、過去の利用者たちのレビューを参考にしながら画面をスクロールすると、「〇〇君の匂いが良かった」の一文が、オトコの指名を決める後押しになった。見た目も技術も大事だが、この時期はどうしても体臭に敏感になるのと、清潔感や仕事へのモチベーションは、最終的には匂いに現れると信じている。
指名するセラピストの年齢が弟と同年齢だったことに、多少の罪悪感が湧くも、その後ろめたさが一層の性欲を沸かせて来る現象に、ムスメ同等の女に手を出す港区のオヤジの気持ちが少し分かってしまった。セラピストが決まれば、希望の日時を選択して予約をLINEで入れる。すぐに担当スタッフから丁寧な返信が来て、対応の早さと礼儀正しさに、身も膣もほぐれ、いよいよ当日を迎えた。
待ち合わせ場所は新宿のホテル「叶」。ホテル街から少し外れた静かな立地と、格安な値段(だが内装は大奥のような客室を備えていてエロい)が個人的におすすめだ。時間通りに到着すると、すでにオトコは待機しており、実物は、顔写真よりも遥かに良かった。くしゃっと笑った無邪気な笑顔が若かりし三宅健を彷彿させる。加工詐欺が横行する女社会において、これは誠実の極みだろう。予約名を伝え、続く会話に戸惑っていたら、オトコが「あいにくの天気だね」と一言。これからド変態プレイをする人間とは思えぬ突然の気候の話に一瞬たじろぐも、ホテルに入るまで会話が途切れることはなく、完璧なエスコートだった。
部屋に入り、靴を脱ぐと、オトコは自然に私の靴の向きを直し、畳んだままの傘を整えた。これはもう、すぐにでも嫁に出せる。女性用風俗とは、単にスケベなテクニックだけでなく、女性を喜ばせる“所作”まで研修制度に組み込まれているのでは?と思わせるほど、オトコの振る舞いは洗練されていた。
行為に入る前に、カウンセリングが行われるのだが、簡単に言えば、これは病院の問診票のようなもので、オトコとの対話を通じて、自分の性と向き合い、NG行為や逆に外せない必須項目を伝える。やりとりを終えたあと、オトコが「お風呂、一緒に入る?」と背後から抱きしめてきたその瞬間、私はもう、自らオトコの下腹部に手を当てていた。オトコと浴室に入ると、すでに湯船が沸いていて、いつの間に?!とオトコの徹底した仕事ぶりに、もう私は素人の男に戻れるのか、と私の不安をよそにオトコが「おいで」とボディーソープのモコモコの泡で全身を優しく洗いながら、我が騒動の発端となっている火種に手を伸ばし、思わず吐息が溢れる。そして鏡越しにオトコのモノを見ると、こちらも延焼しており、オトコのモノもまた「一軍」なことにトキメキを隠せなかった。
近年話題となっている女性用風俗を、久しぶりに利用した。もし今後、利用を迷っている人がいるなら、何かの参考になれば嬉しい。
【後半に続きます!】